λ比計算ツール
トライボロジー試験条件から潤滑状態を推定
試験構成・荷重・巻き込み速度・潤滑剤特性・表面粗さから、EHL 理論 (Hamrock-Dowson / Dowson-Higginson) に基づき λ比 (λ = hmin / σ) を計算します。
1試験方法を選択
回転試験 (Rotating)
往復試験 (Reciprocating)
使用した式と準拠規格
EHL の無次元速度・材料・荷重パラメータ。線接触では W′ = W/(E′R) を用います。
点接触 (Hamrock–Dowson)。円形接触では k = 1 とし、h_min = H_min · R で寸法をもつ膜厚に戻します。
線接触 (Dowson–Higginson)。円柱-平板などの線接触形状で使用します。
換算弾性率。ν はポアソン比です(動粘度ではありません)。
Hertz 点接触の接触半径と最大接触圧力。線接触では b = √(4w′R/πE′)、p_max = 2w′/(πb) です。
λ < 1 で境界潤滑、1 ≤ λ < 3 で混合潤滑、λ ≥ 3 で流体潤滑と判定しています。
記号と単位
| 大気圧下・使用温度における動粘性係数 | Pa·s | |
| 巻き込み速度 (u₁ + u₂)/2。すべり速度ではありません | m/s | |
| 圧力-粘度係数 | GPa⁻¹ | |
| 換算弾性率 | Pa | |
| 換算曲率半径 | m | |
| 垂直荷重(線接触では単位長さあたり w′) | N | |
| 最小油膜厚さ | nm | |
| 合成表面粗さ (RMS) | nm | |
| 膜厚比 | — |
適用範囲と制限
- ·膜厚を支配するのは巻き込み速度です。純すべり試験ですべり速度を入力すると膜厚を過大評価します。
- ·等温・ニュートン流体を仮定しています。高すべり率での粘性発熱やせん断減粘は反映されません。
- ·圧力-粘度係数 α は基油種と温度に強く依存します。文献値を流用すると膜厚が数十 % ずれることがあります。
- ·λ による潤滑域の境界 (1 と 3) は慣用的な目安であり、表面形状や添加剤膜によって前後します。
Excel で再現する
換算弾性率 E′
=1/((1-$B$1^2)/$A$1+(1-$B$2^2)/$A$2)A1 = E₁ [Pa]、B1 = ν₁、A2 = E₂ [Pa]、B2 = ν₂(いずれもポアソン比)。
最小油膜厚さ h_min(点接触)
=3.63*(($A$5*$A$6)/($A$3*$A$4))^0.68*($A$7*$A$3)^0.49*($A$8/($A$3*$A$4^2))^-0.073*(1-EXP(-0.68))*$A$4A3 = E′ [Pa]、A4 = R [m]、A5 = η₀ [Pa·s]、A6 = u_e [m/s]、A7 = α [Pa⁻¹]、A8 = 荷重 [N]。結果は m。
λ 比
=A10/SQRT(A11^2+A12^2)A10 = h_min、A11 = σ₁、A12 = σ₂(すべて同じ単位で)。
前提と限界
- 本計算ツールでは、ニュートン流体および等温条件を仮定しています。実際の潤滑剤では、せん断速度に依存した粘度低下 (shear-thinning) や、温度・圧力に依存した粘度変化が生じるため、実際のλ比が大きく変わる可能性があります。
- 油膜厚さを決める主な要因は、巻き込み速度 (entrainment speed) u_e = (u₁ + u₂) / 2 です。すべり速度 (sliding speed) は、入口部でのせん断発熱 (inlet shear heating) などを通じて、主に間接的に影響します。
- λ比の予測には、実効粘度や変形後の表面粗さのばらつきに起因する不確実性が伴います。そのため、結果は絶対的な予測値ではなく、条件を比較するための指標としてご活用ください。
λ比 (ラムダ比) とは
λ比 (ラムダ比) は、トライボロジー接触における潤滑状態を表す無次元数です。最小油膜厚さ h_min と接触面の合成粗さ σ* の比として定義されます (λ = h_min / σ*)。
λ < 1 では、固体表面の凹凸 (アスペリティ) が直接接触しやすく、境界潤滑域となります。この領域では、摩擦や摩耗が生じやすくなります。
1 ≤ λ < 3 は混合潤滑域であり、部分的なアスペリティ接触と流体圧力による支持が共存します。
λ ≥ 3 では、油膜が両面を十分に隔離する全膜潤滑域となり、摩耗が大幅に低下しやすくなります。
計算手法
本計算ツールでは、弾性流体潤滑 (EHL) 理論に基づき、Hamrock-Dowson 式を用いて最小油膜厚さ h_min を推定します。
まず、換算弾性係数 E' とヘルツ接触パラメータ (接触半径 a、最大接触圧力 p₀) を算出します。次に、動作温度における粘度を WLF モデルで補間します。
得られたλ値に基づいて潤滑域を自動判定し、潤滑剤の選定や油膜厚さの最適化に向けた参考値として活用できます。